Kataru Link*世界一のアートの見本市Art Baselへ

旅への想いが日々強くなっているこの頃ですが、2019年6月に自分の仕事への刺激を得るために、フリーになってから初めての長い旅として、スイス・バーゼルで開催のArt Baselを視察してきました。


Art Baselは、新しいファインアーティストの発掘の場所であり、また世界中のギャラリーが自信の作品を紹介する場でもあります。話によると、無名だったバスキアも、Art Baselで紹介されたことがきっかけで世界的なキャリアを積み上げたそうです。ファインアートだけではなく、隣では、design Miamiというインテリアやデザインをメインにした展覧会も開催しており、その広大な展示会場に、ファインアート、建築、家具、インテリアに関連した作品が有名無名に関わらず大集結していました。来場者は有名なギャラリストもいれば、アート蒐集家もいて、小耳に挟んだものでは、「このクーンツの作品はいくら?」「9億円です(日本円に換算)」というような会話が普通に行われていました。

そんな会話にゼロの数を数え圧倒されながら、とにかく今回は初めてのArt Baselということもあり、具体的に作家のリサーチというより、街をあげてのこの芸術のお祭りの全体像を掴むことを目的にいたしました。
まず、展覧会場自体、東京で言うところのビッグサイトのような会場なのですが、ヘルツォーク&デ・ムーロンという有名建築家の作品で、建物が、すでにアートなのです。
展示会場内に入ると、展示の方法も照明もかなり凝っていて、建物内に一歩入った途端、アートの国に迷い込んだ気持ちになりました。比べるわけではないけれど、日本の展示会場のあの小間で分けられたブース作りとは大違いです。前職でトレードショーのブース作りを何回も経験しましたが、その観点で言うと、展示に対する費用の掛け方が桁違いだと感じました。それはつまり会場側も、展示する側も、入場する側もアートにかける情熱が等しくあるということだと思います。

Baselの街や、近隣の街でもArt Baselに合わせいろいろな展覧会も同時に展開されていました。Art Baselのチケットを見せれば入場無料の展示会もあり、いわば町おこし的に、街中がアートやデザインで盛り上がっていました。

まずはバーゼル市立美術館に。こちらは新館と旧館があり、たまたまその年の春に上野で観たコルビジェ展でトークショーに来ていたスイスの若手建築家が建てたもので、私もスライドショーで外観を見ていました。まさかその時はスイスで実物を見る事になろうとは思っていませんでしたが、実際に歩きながら、建築家が語っていた内容が頭に浮かんできて、二重の楽しみを得られました。展示内容はピカソやブラックなどのキュービズム展でしたが、彼らがセザンヌの風景画から影響を受けたというのも興味深かったです。
その後ライン川を渡り、Art Baselにはまだ展示出来ないけど、新進気鋭の、若手作家を紹介するLISTEという会場に。ここは、昔何かの倉庫か会社だった古い建物を改良した場所で、赤煉瓦でできた建物自体が不思議でカッコいい。紹介されている作家はスイスだけでなくヨーロッパ、アメリカや南米、キューバなど様々なギャラリーが出展していました。第2、第3のバスキアを見つけに世界中から人々が観に来ておりました。
そして最後に、Art Basel期間中最大の話題とも言える「見せる倉庫」というコンセプトのシューラーゲーに。これはスイスの名士ホフマン家が集めてきた現代アートが所蔵された倉庫ですが、オーナーの意向として、アートは人々を癒やす存在だからより多くの人々に見せよう、という事でアートをコンテナとかに入れて保管するのではなく、壁にかかっていたり、広いスペースに配されていたりして歩きながら見ることができるようになっていました。今回Art Basel開催期間中のみの限定公開という事で、ガイドさんに連れられて回りました。展覧会ではないのでキャプションもないし、展示順などもなく許可されたエリアを自由に見ることができました。
建物は、バーゼルのメッセ会場も建築したデ・ムーロンというバーゼル出身の建築家で、線と面、光の取り入れ方が美しかったです。倉庫という概念とは全くかけ離れた建築物で、色々な意味で発想の転換になりました。

余談になりますが、バーゼルという街には、有名企業の社屋も含め、かなり奇抜な建物が点在しています。世界屈指のモダン建築の都市とも言えるでしょう。バーゼルだけではなくスイスは国として公共の建築物に著名な建築家を起用し費用をかけて、そして結果的にそれが観光の拠点になることにつながっているようにも感じました。デザイン性の高い国、妥協しない国、それが今回スイスに感じた印象です。

● ● ●

PAGE TOP